赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方|原因や治療法も解説
赤ちゃんの頭がゆがむ原因のひとつに「頭蓋骨縫合早期癒合症」があります。赤ちゃんの頭にゆがみがあり「頭蓋骨縫合早期癒合症によるものではないか」と、心配しているのではないでしょうか。
ご両親が頭蓋骨縫合早期癒合症を完全に見分けるのは、困難です。しかし見分け方を知っておくことで、気になる症状がある場合は早めに受診できます。
この記事では、頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方や治療方法などを解説します。赤ちゃんの頭のゆがみが気になる方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症とは
赤ちゃんの頭の骨は何枚かに分かれており、骨と骨の間には隙間があります。
頭蓋骨縫合早期癒合症とは、赤ちゃんの成長に必要な骨の隙間が通常より早く閉じてしまう病気で、「狭頭症(きょうとうしょう)」と呼ばれることもあります。海外の報告によると、発生する頻度は1万人あたり4〜10人ほどです。
ここからは、赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症について、以下の内容を解説します。
基本的な内容を分かりやすく説明するので、ぜひ参考にしてください。
分類
頭蓋骨縫合早期癒合症は以下のように、頭の骨以外に顔や手足の変形もある「症候群性」と、変形が頭の骨のみに限られる「非症候群性(単純性)」に分けられます。調査によってばらつきがありますが、頭のかたちのみが変形する「非症候群性」が全体の6割を占め、やや多いとされています。
頭の骨以外の変形 | 全体に占める割合 | |
症候群性 | あり | 40% |
非症候群性(単純性) | なし | 60% |
症候性の頭蓋骨縫合早期癒合症を起こす代表的な病気は「クルーゾン病」「アペール症候群」「ファイファー症候群」です。症候性の場合、手足の変形や水頭症(すいとうしょう:通常は脳や脊髄を循環する「髄液」が頭の中に溜まる病気)などを併発するケースもあります。
また頭蓋骨縫合早期癒合症は、赤ちゃんに必要な隙間のうちどこが閉じているかによって頭のゆがみ方が変わります。そのため、頭のゆがみ方によって「三角頭蓋」「短頭蓋」「舟状(長)頭蓋」などと分類することも可能です。
原因
頭蓋骨縫合早期癒合症の原因は、症候群性か非症候群性かによって以下のように異なります。
・症候群性(頭以外の変形もある):遺伝による要素がある
・非症候群性(変形は頭のみ):原因は不明
症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症は、遺伝子変異がひとつの原因とされています。非症候群性の原因は不明とされていますが、赤ちゃんがお腹の中にいたときの圧迫や締め付けなどによって起こるという説もあります。
症状
頭蓋骨縫合早期癒合症の赤ちゃんには、頭の成長に必要な骨の隙間がありません。そのため、以下のような症状が起こる可能性があります。
・頭の骨や顔がゆがむ
・脳が圧迫され、発達に影響する
赤ちゃんの脳は、生まれてからの1年間で約2倍の大きさに成長します。頭蓋骨縫合早期癒合症により脳の成長するスペースが取れないと、発達面でも大きな影響が出ることが考えられるのです。
また、症候性で他の病気を合併している場合は、顔のゆがみや呼吸の苦しさなどが出るケースもあります。
頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方
頭蓋骨縫合早期癒合症は、「頭のかたち」「顔のゆがみ」「頭の骨の盛り上がり」などで見分けられます。
実は赤ちゃんが受ける「乳児検診」でも、医師が赤ちゃんの「頭のかたち」「大きさ」などを確認しています。
乳児検診で頭蓋骨縫合早期癒合症が見つかる例は、以下の通りです。
・頭のゆがみが大きい
・頭囲が通常より成長していない
・大泉門(だいせんもん:頭の骨の隙間)が生後7ヶ月未満で閉じている など
ただし乳児検診でひとりの赤ちゃんにかけられる時間は限られており、頭の成長には個人差があります。そのため、すべての頭蓋骨縫合早期癒合症を検診で見分けることは極めて困難です。
なお、頭蓋骨縫合早期癒合症の正式な診断には、以下のような検査を行います。
・レントゲン撮影
・3次元CT撮影
・脳のMRI撮影
また、ご両親が「頭のかたちが気になる」と赤ちゃんの頭のかたちを診察する医療機関を受診し、頭蓋骨縫合早期癒合症が見つかるケースもあります。
頭のゆがみが気になるなら、まずはかかりつけの小児科医に相談しましょう。十分な返答が得られなかった場合は、頭のかたちを診察する医療機関を受診すると、より詳しい検査を受けられます。
頭の大きさの成長ピークを過ぎ、骨が固まってしまうと治療は難しくなります。適切な治療時期を逃さないために、早めの受診がおすすめです。
頭蓋骨縫合早期癒合症の治療法は手術
頭蓋骨縫合早期癒合症により頭の変形や脳への影響がある場合は、手術が必要です。手術の目的は、おもに以下の2つが挙げられます。
・頭の骨を広げて脳が成長できる場所を確保し、脳や神経の発達を助ける
・頭や顔のかたちを改善し、見かけをととのえる
「呼吸障害があるか」「頭の中の圧力が高まっているか」などの症状によって異なりますが、多くの場合は生後1歳頃までに手術を行います。
頭の骨が十分に拡張できれば、一度の手術で治療が終わるケースもあります。ただし症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症により手足の症状がある場合は、再手術が必要なケースも珍しくありません。
赤ちゃんが成長すると顔や頭の大きさやかたちも変化するため、手術後は定期的な経過観察を行います。
頭蓋骨縫合早期癒合症でない赤ちゃんの頭のゆがみも多い
頭のゆがみは、頭蓋骨縫合早期癒合症でないケースも多くみられます。「変形性斜頭症」「位置的頭蓋変形症」と呼ばれる症状で、おもな原因は赤ちゃんの「向き癖」です。
赤ちゃんの頭はやわらかく、寝ているときにかかる自分の頭の重さだけでも変形します。たとえば、「生後1ヶ月で病院を受診した健康な赤ちゃんの約6割に頭のゆがみがみられた」という報告もあるくらいです。
向き癖による頭のゆがみは「理学療法」「ヘルメット治療」などで治療します。赤ちゃんの頭が自然に成長する力を利用するため、頭が大きく成長する生後6ヶ月頃までに治療を始めるのが望ましいでしょう。
赤ちゃんの頭のゆがみは、頭のかたちを診察する医療機関で診察可能です。治療の有効性が高い期間は限られるため、気になる場合は早めの受診をおすすめします。
頭蓋骨縫合早期癒合症ではない斜頭症の治療について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてさい。
Q:赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症に気付かないとどうなりますか?
頭蓋骨縫合早期癒合症に気付かないと、赤ちゃんの頭の骨や脳がうまく成長できません。結果的に、以下のような症状が出る可能性があります。
・頭痛
・脳の障害
・発達の遅れ
・頭の骨や顔のゆがみ
頭のゆがみが大きいと顔の骨も変形し、見た目への影響もあらわれます。また、脳へ圧力がかかるため、脳の障害や発達の遅れが出るリスクも問題です。
赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症は、「頭の大きさ」「ゆがみ」で見つかるケースが多くみられます。しかし気付かずに成長した場合は、幼稚園や小学校に入ってから「頭痛」「発達の遅れ」「学習障害」などがきっかけで見つかるケースもあるようです。
Q:赤ちゃんの頭蓋骨縫合早期癒合症は発達障害の原因になりますか?
頭蓋骨縫合早期癒合症により脳が成長できないと、脳神経の発達が遅れ、結果的に発達障害の症状が出るケースが考えられます。
たとえば、頭蓋骨縫合早期癒合症が見つからないまま成長した子どもに、「言葉の遅れ」「多動症」「学習障害」「広汎性発達障害」などがみられたという報告もあります。
ただし、発達障害の原因は「遺伝的要因」「環境要因」などがあるとされており、頭蓋骨縫合早期癒合症が関係ない発達障害も珍しくありません。
頭蓋骨縫合早期癒合症と発達障害について気になる点は、医師に相談してみてください。
まとめ
頭蓋骨縫合早期癒合症は、「頭のかたち」「ゆがみ」「大きさ」「骨の盛り上がり」などで見分けられます。ただし、見た目だけで完全に見分けることは難しいため、確定診断にはレントゲンや3次元CT撮影などが必要です。
頭蓋骨縫合早期癒合症を放置すると、脳が十分に大きくなれません。「頭や顔のゆがみ」「頭痛」「発達の遅れ」などが出る可能性があるため、1歳ごろまでに多くのケースで手術が行われます。
ただし頭のゆがみは、頭蓋骨縫合早期癒合症以外に「向き癖」によるものもあります。原因によって治療法が異なるため、気になる場合は赤ちゃんの頭のかたちを診察する医療機関へ受診するのもよいでしょう。
「赤ちゃんの頭のかたち外来」は、東大阪市にある赤ちゃんの頭のゆがみを診察する専門外来です。基本的には向き癖による頭のゆがみを治療していますが、初回の診察時に頭蓋骨縫合早期癒合症の可能性がないかを慎重に診察しています。
診察では頭蓋骨縫合早期癒合症ではないかの判別を行い、3Dスキャンによる頭のかたち撮影を行います。頭蓋骨縫合早期癒合症ではない場合、希望される方には自由診療による「ヘルメット治療」も可能です。
診察のみ、3D撮影のみの受診も受け付けています。気になることは気軽に公式LINEからご相談ください。
参考文献
[1]頭蓋骨縫合早期癒合症|日本形成外科学会https://jsprs.or.jp/general/disease/umaretsuki/atama/sokiyugo.html
[2]頭蓋骨縫合早期癒合症|日本頭蓋顎顔面外科学会
https://jscmfs.org/general/disease01.html
[3]頭蓋骨縫合早期癒合症|日本小児神経外科学会
http://jpn-spn.umin.jp/sick/c.html
[4]新生児・乳児の頭蓋変形
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja
[5]乳幼児健康診査 保健指導用手引書(R元年度改訂版)|滋賀県健康医療福祉部
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5175807.pdf
[6]乳幼児健診における疾病スクリーニングの判定基準について|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/143011/201410018A_upload/201410018A0006.pdf
[7]発達障害を理解する|日本創傷・オストミー・失禁管理学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnwocm/23/4/23_370/_pdf/-char/ja