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斜頭症における顔のゆがみ|原因や治療法・発達障害との関連も解説

やわらかい赤ちゃんの頭は、頭の重さによる圧力だけでゆがむこともあります。「自然に治るから様子を見てもよい」といわれたものの、赤ちゃんの「斜頭症」が、顔のゆがみや発達障害につながると聞き、不安に思うご両親もいらっしゃるでしょう。
斜頭症は顔のゆがみを引き起こしますが、いくつかの方法で治療できます。今回は、斜頭症が顔のゆがみを起こす流れ原因発達障害の関係性などを解説します。治療方法自宅できる頭のゆがみ計測方法などと合わせて見ていきましょう。

斜頭症とは

出典:ベビーバンド公式

「斜頭症」とは、頭のかたちにゆがみがあり、左右対称ではないことです。斜頭症は「変形性斜頭症」「位置的頭蓋変形症」という言葉であらわされることもあります。[1]

「新生児突然死症候群(SIDS)」を予防するために、赤ちゃんを仰向けで寝かせるようになったことから斜頭症が増えた、といわれています。

たとえばアメリカでは、仰向け寝が推奨されるようになってから、斜頭症に関する相談が以前の6倍に増えたという報告もあるくらいです。

斜頭症は、頭の後ろ側(後頭部)の片側が平らになり、上から見ると丸みのある側より凹んでみえるのが特徴です。

症状が進行すると顔のゆがみが出て、上から見ると頭が丸ではなく平行四辺形のようになります

また、赤ちゃんの頭のゆがみには、斜頭症以外に「短頭症」「長頭症」もあります。[2]

両側とも頭の後ろが平らな場合は「絶壁頭(ぜっぺきあたま)」ともよばれる「短頭」、縦に長い場合は「長頭」となるのです。[3]

斜頭症が起こる3つの原因

斜頭症が起こる原因は、おもに以下の3つと考えられています。

原因によって、経過や適した治療法が異なります。ぜひ理解しておきましょう。

向き癖

斜頭症の原因で非常に多いのが、いつも赤ちゃんが特定の向きで寝る「向き癖」です。[1][4]

向き癖の原因は、以下のものがあげられます。[5]

・毎日の寝る向き
・お腹の中での赤ちゃんの向き
・頭のゆがみ
・斜頸(しゃけい:片側の筋肉や骨が生まれつき動かしにくいため首が傾くこと) など

さらに「抱っこや授乳」「起きている赤ちゃんの居場所」「添い寝や沿い乳」などの向きも影響する可能性があります。

赤ちゃんの頭はやわらかく、寝ている間に自分の頭の重さで変形することは珍しくありません。

軽度の向き癖は成長にしたがって自然に改善するケースもありますが、重度の向き癖は治りにくく、あとで説明する治療が必要になります。

新生児の向き癖について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

出産時の圧力

赤ちゃんは狭い産道を通るために、頭の骨を変形させながら生まれてきます。

そのため、出産に時間がかかったり、吸引分娩(出産時に赤ちゃんの頭を吸引カップで引っ張る)だったりすると、赤ちゃんの頭がゆがむ可能性があります。

また出産時の頭のゆがみは、赤ちゃんの向き癖につながります

生まれた時から頭のゆがみが気になる場合は、赤ちゃんを寝かせる向きに注意するとよいでしょう。

頭蓋縫合早期癒合症

頭蓋縫合早期癒合症とは頭の骨が通常より早い時期にくっついてしまう病気で、「狭頭症(きょうとうしょう)」ともよばれます。[6]

頭蓋縫合早期癒合症による斜頭症は「病気」に分類されるため、向き癖や出産時の圧力が原因で起こる頭のゆがみとは分けて考えます

海外の報告によると、頭蓋縫合早期癒合症は1万人あたり4〜10人ほどにあらわれるとされ、詳しい原因はまだ明らかになっていません。

頭の骨が早くくっついてしまうと脳が十分に大きくならず、頭や顔のゆがみに加えて脳の発達にも支障をきたします。[1]

頭蓋縫合早期癒合症の見分け方が気になる方は、以下の記事も参考にしてください。

斜頭症は顔のゆがみを引き起こす

斜頭症が治らないままだと徐々に顔がゆがみ、以下のような症状が出る可能性があります。

・目の大きさが左右で大きく違う
・斜視(しゃし:左右の黒目の向きが違う)になりやすい
・歯並びや噛み合わせが悪い
・マスクやメガネをかけにくい

斜頭症で顔や頭がゆがむ流れは、以下の通りです。[1]

1.いつも下になっている側の頭の骨が平らになる
2.耳の位置が前にずれる
3.おでこや頬が突き出る
4.平らな面と反対側の頭が突き出る
5.頭のかたちが平行四辺形になる

顔のゆがみは、3番目の「おでこや頬が突き出る」の地点で起こります。

また別の研究によると、斜頭症の赤ちゃんの顔は、下あごと鼻が左右非対称になりやすいという報告もあります。[7]

ただし、斜頭症が顔のゆがみを起こす詳しいメカニズムはわかっていない部分もあり、今後の研究が待たれるところです。

もともと人間の顔は、完全な左右対称ではありません。赤ちゃんの顔のゆがみが気になる場合は、医師に相談してみましょう。

斜頭症の治療は3種類

出典:ベビーバンド

斜頭症の治療は、以下3つの方法があります。

斜頭症になった原因や程度ごとに適した治療は異なるので、順番に説明します。

理学療法

理学療法とは、日々の生活で斜頭症を治療する「リハビリ」のようなものです。具体的には、以下のような方法があります。

・赤ちゃんの寝る向きを変える
・向き癖と逆の向きにおもちゃなどを置いて興味を引く
・筋肉の緊張をやわらげるマッサージをする
・うつぶせにする時間(タミータイム)を増やす など

ゆがみの程度が軽い場合は、理学療法でも症状の改善が見込めます。[8]

理学療法を受けたい場合は自己流ではなく、頭のゆがみを診察する医療機関で相談するのがよいでしょう。

理学療法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

ヘルメット治療

ゆがみの程度が大きい斜頭症では、ヘルメット治療がよく選ばれます。ヘルメット治療では生後2〜6ヶ月ほどの赤ちゃんに治療用ヘルメットをかぶせて頭のゆがみを矯正します。

ヘルメット治療は、斜頭症による顔のゆがみにも有効です。[9]

治療効果は理学療法より高く、2015年にアメリカで行われた調査では「ヘルメット治療を受けた赤ちゃんのうち約95%が、目標とする頭のかたちに矯正できた」という報告もあります。[10]

ただしヘルメット治療は基本的に「自由診療」のため、健康保険や乳児医療証による医療費無料の対象外です。治療を受けるかどうかはご両親の判断に任されます。

ヘルメット治療のしくみや対象者、後遺症などは以下の記事で解説しています。気になる方は参考にしてください。

外科的治療(手術)

頭蓋縫合早期癒合症により斜頭症が起きている場合は、発達の遅れや顔のゆがみを防ぐため、1歳ごろまでに手術を行います。[6]

手術方法はいくつかありますが、変形している頭蓋骨を切り、正常に近いかたちに組み直すのが一般的です。

手術により脳が大きくなるスペースができれば、発達状況や顔のゆがみの改善も期待できるでしょう。

Q:斜頭症は顔のゆがみ以外に発達障害も起こしますか?

斜頭症が発達障害を起こすか、医学的には明らかになっていません。

しかし、近年「斜頭症の赤ちゃんに発達の遅れがみられる」という報告が複数あり、斜頭症と発達障害の関連性が注目されています。[2]

たとえば「運動」「認知および言語」のどちらも、斜頭症の赤ちゃんは通常の赤ちゃんよりスコアが低かったという研究結果もあります。[11]

ただし、発達の遅れがよくみられるのはおもに中等度以上の斜頭症の赤ちゃんなので、ゆがみが軽いなら心配しすぎる必要はありません。

発達障害の原因は「遺伝要因」「環境要因」の2つがあり、斜頭症がどの程度影響するかは研究が待たれるところです。[12]

斜頭症の赤ちゃんの発達が気になる場合は、頭のかたちを診察する医療機関やかかりつけの小児科などで相談してみましょう

Q:赤ちゃんの斜頭症のレベルはどうやって調べますか?

医療機関では、特殊なカメラを使った3Dスキャンで赤ちゃんの斜頭症のレベルを調べます。

検査の結果、頭のゆがみ具合は「正常」「軽症」「中等度」「重症」「最重症」の5段階で評価され、どのような治療が望ましいかをご両親と医師で相談します

なお、スマホで赤ちゃんの頭の写真を撮ってゆがみの程度を調べる「赤ちゃんの頭のかたち測定ツール」も有効です。

医療機関の検査ほど詳しくはありませんが、自宅で簡単に「ゆがみ度」「絶壁度」がわかるので、気になる方は試してみてください。

まとめ

斜頭症が治らないままだと「耳が前に動く」「おでこや頬が突き出る」など、顔のゆがみが起こる可能性があります。

具体的には「マスクやメガネをかけにくい」「歯のかみ合わせが悪い」「目の大きさが違う」などの生活上の不都合が考えられます。

斜頭症の原因は「向き癖」「出生時の状況」「頭蓋縫合早期癒合症」などがあり、向き癖は理学療法やヘルメット治療で改善可能です。

赤ちゃんの頭のかたち外来」は、東大阪市にある赤ちゃんの頭のゆがみを診察する専門外来です。斜頭症の診察や治療が可能で、3Dスキャンによる頭のかたち撮影やヘルメット治療に対応しています。

3Dスキャン撮影だけの受診も可能で、治療を無理強いすることはありません。予約はLINEから受け付けており、最短で翌日に来院できます。

LINEでは、予約以外に質問も受け付けています。ぜひ気軽に登録して、頭のかたちについての心配ごとをご相談ください。

参考文献

[1]新生児・乳児の頭蓋変形|日大医誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja

[2]医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会の進め方|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000055706_4.pdf

[3]国際基準に基づく小奇形アトラス 形態異常の記載法|日本小児遺伝学会
https://plaza.umin.ac.jp/p-genet/atlas/03-1.html

[4]乳児の向き癖特徴の非接触な検出手法の開発|生体医工学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/Annual60/Abstract/Annual60_210_2/_article/-char/ja

[5]斜頸|日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/torticollis.html

[6]頭蓋縫合早期癒合症とは|日本形成外科学会
https://jsprs.or.jp/general/disease/umaretsuki/atama/sokiyugo.html

[7]三次元コンピューター断層撮影レビューを使用した変形斜頭症における顔の非対称性の分析
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5556726

[8]理学療法による変形性斜頭症の治療
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31232996

[9]変形性頭蓋底斜頭症の乳児に対する成型ヘルメット療法による顔の非対称矯正
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29221913

[10]頭蓋位置変形に対する保存療法とヘルメット療法の有効性
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25415272

[11]認知的結果と位置性斜頭症
https://publications.aap.org/pediatrics/article-abstract/143/2/e20182373/76810/Cognitive-Outcomes-and-Positional-Plagiocephaly?redirectedFrom=fulltext

[12]第14回「発達障害は増えているのか?」(令和元年5月)|西宮市
http://www.city.nishinomiya.lg.jp/kosodate/kodomomiraicenter/column/back/ootasensei_14.html