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赤ちゃんの絶壁は自然に治る?自宅でできる具体的な予防対策を解説

現在は乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防するために、赤ちゃんの仰向け寝が推奨されています。仰向け寝の推奨により、乳幼児突然死症候群の発症率は下がりましたが、絶壁や頭のゆがみに関する悩みが増加したことも事実です。[1][3][7]

「うちの子絶壁かな」「自然に様子を見るのはどのくらいまで?」などと不安を抱えながら過ごしているご両親もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、軽度の頭のゆがみ、絶壁であれば、徐々に改善されていくといわれています。[1]

そこで今回は、赤ちゃんが絶壁になるメカニズムとともに、自然経過を見守る中でのポイント自宅で行える具体的な予防対策を解説します。
絶壁がいつまでなら自然に直るかすぐ知りたい方は、以下のリンクから気になる部位をチェックしてください。

赤ちゃんの絶壁(短頭)とは

絶壁とは、後頭部が平坦になっている頭のかたちを指し、「短頭症」とも呼ばれています。

元々日本人の骨格は、欧米人と比べ横幅が長く前後幅が短い絶壁傾向にあるといわれています。逆に欧米人は横幅が短く前後幅が長い長頭傾向にあり、人種による骨格の違いが存在します。[9]

加えて乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のため、仰向け寝が推奨されていることで絶壁(短頭)が増えていると考えられているのです。

また、赤ちゃんの頭のゆがみには、絶壁(短頭)の他に以下の2つがあります。

・斜頭:頭の左右どちらかが凹んでいる状態

・長頭:頭の左右幅に比べ、前後幅が長い状態

「短頭症」「斜頭症」「長頭症」の3つを合わせて「頭蓋変形症」と呼ぶこともあります。

赤ちゃんが絶壁(短頭)になる原因

絶壁(短頭)を始めとする頭蓋変形の原因は、大きく2つに分けられます。

・圧力によるもの

・病的なもの

それぞれを具体的に見ていきましょう。

圧力によるもの

赤ちゃんの頭は柔らかく、外からの圧力で簡単に変形してしまいます。絶壁の多くはこの圧力によるものです.

具体例内容
お腹の中や出産時における圧力お腹の中での姿勢により頭がゆがむ

難産や吸引分娩により無理な圧力が加わることで 頭がゆがむ
向き癖出産時の頭蓋変形により向きやすい方向が決まる

いつも同じ方向で寝ていると、下になっている面 が平らになる

絶壁(短頭)は仰向けで寝ている時間が長い場合 にみられる

陣痛が始まると、赤ちゃんは産道を通りやすいように向きを変えながら生まれてきます。この過程で赤ちゃんの向きの異常が起きると、分娩時に無理な圧力が加わってしまいます。結果難産となり、頭蓋変形が起こりやすいのです。[2]

また、向き癖によりいつも同じ面を下にしていると、赤ちゃんの頭の重さによる圧力でも頭蓋変形が起こります。

病的なもの

絶壁を起こす代表的な病気には、「頭蓋縫合早期癒合症」があります。

赤ちゃんの脳は早いスピードで大きくなるため、頭蓋骨が広がりやすいように何枚かの骨に分かれ、骨の間には隙間(頭蓋縫合)が空いています。しかし頭蓋縫合早期癒合症はその骨の隙間が早いうちに閉じてしまい、頭のゆがみや脳の発達遅れが起きる病気です。

絶壁(短頭症)になるのは、頭蓋縫合早期癒合症のうち冠状縫合という前頭部の左右に伸びる骨の隙間が早くに閉じてしまう場合が考えられます。

頭の変形、脳組織の発達遅れを防ぐため、大半のケースで外科的手術が必要になります。

頭蓋縫合早期癒合症について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

赤ちゃんの絶壁はいつまでなら自然に治るのか

検診で絶壁などの頭のかたちについて相談して「様子を見ましょう」と言われると、「様子を見るっていつまで?」「本当に治るのかな」と疑問や不安を持つかもしれません。

生後1~6ヶ月の健康な赤ちゃんの頭のかたちを調査した研究によると、「赤ちゃんの頭のゆがみは、生後1ヶ月から3ヶ月までに一時的に悪化したが、生後6ヶ月には改善した」と報告されています。[1][6]

これは、生後3~4ヶ月になると首がすわり、縦抱きやおんぶなどの色々な姿勢を取れるようになったり、動きが活発になったりするためと考えられます。

つまり、首がすわっていない生後1〜3ヶ月の間は絶壁が悪化しやすいものの、体が発達して動けるようになれば徐々に改善する場合もあるということです。

ただし、「生後1ヶ月で重症だった場合、生後6ヶ月でも重症度は改善しない」という研究報告もあります。[1]

ひどい絶壁は前述した病的な要因も考えられるため、ゆがみが強いと感じる場合は早めに医師に相談しましょう。

赤ちゃんの絶壁予防に自宅でできる4つの対策

絶壁などの頭のゆがみを予防、悪化させないために、自宅でできる具体的な方法を紹介していきます。

どれも簡単に取り入れられるため、無理のない範囲で参考にしてください。

定期的に体の向きを変える

寝ている方向を定期的に変えてあげることで、頭にかかる圧力が分散され、ゆがみが改善することがあります。絶壁傾向の赤ちゃんは仰向けで寝ていることが多いので、起きている時は横向きの時間を作るのもよいでしょう

向き癖がある場合、向き癖がある方向からタオルやクッションを挟んであげると、その後すんなりと反対側を向いてくれることが多いです。

例えばお顔が右を向いている場合、右側から背中全体にタオルやクッションを挟んであげると、お顔が左側を向きやすくなります。

お顔の下だけにタオル、クッションを入れても向き癖の方向に戻ってきてしまうため、背中全体に入れ込んであげましょう。

ただし乳幼児突然死症候群や窒息を防ぐため、赤ちゃんが眠る時は仰向けに戻し、タオルやクッションを使う際は必ず目を離さないようにしてください。

また、頭のかたちをととのえるためのドーナツ枕が多く販売されていますが、絶壁頭の予防対策に効果があるかの医学的な根拠は示されていません。アメリカの政府機関であるFDA(米国食品医薬品局)が使用すべきではないと声明を出しているほどです。[8]

その理由としては乳幼児突然死症候群、窒息の可能性があるためです。安全性、有効性が立証されていないため、ドーナツ枕の使用は控えるようにしましょう。

<注意点>
・窒息の可能性があるので、顔や口の前にタオル、クッションが当たらないようにしましょう。

授乳時の姿勢を見直す

向き癖により、向きにくい側の授乳がうまくいかない場合があるかもしれません。母乳をあげる姿勢には「横抱き」「フットボール抱き」「縦抱き」などの種類があります。

たとえば、右向きが好きな赤ちゃんであれば、右側の授乳が苦手なため、左側からそのままスライドしてフットボール抱きにしてあげると授乳しやすいです。

ミルクをあげる場合には1日に数回でも良いので、向き癖と反対側から授乳してみましょう。始めは嫌がるかもしれませんが、徐々に慣れてくれるでしょう。

授乳に関しては無理に向きにくい方向を向かせてしまうと、かんしゃくを起こして授乳がさらにうまく進まない可能性があります。少しずつ慣らしてあげましょう。

<注意点>
赤ちゃんの様子を見ながら横抱き、フットボール抱き、縦抱きなど試してみましょう
・1日に数分、数回ずつなど少しずつ進めましょう。

生活する場の位置をととのえる

向きにくい方向を向いていると、赤ちゃんは居心地が悪く泣いてしまうことがあるかもしれません。その場合は苦手とする方向からご両親が優しく声をかけてみてください

生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ目が良く見えません。しかし声はお腹にいる頃から聞こえており、目で見てご両親と分からなくても、声を聞くだけで赤ちゃんは安心するはずです。生後2ヶ月を過ぎると徐々に目がみえ始め、苦手な向きでもご両親の姿を確認できれば赤ちゃんは安心できるでしょう。

ベビーベッドの位置や、就寝時のご両親の場所を向き癖と反対側にするなど、自宅での過ごし方をぜひ調整してみてください。

タミータイムを取り入れる

タミータイムとは、「大人がそばで見守りながら、1日30分程度うつぶせの状態を作る」ものです。いわゆる生後6ヶ月未満の乳児に推奨される「腹ばい練習」ですね。[5]

「首がすわっていないのにうつぶせにして大丈夫かな」と心配されるかもしれませんが、早い段階からのうつぶせは、運動発達の促進効果や、頭のゆがみ、特に絶壁の予防に効果があるといわれています。[6]

<注意点>
・うつぶせにする場所は布団やクッションの上は避け、硬いマットや畳で行いましょう
・うつぶせにしている間は目を離さないようにしましょう

  タミータイムについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

Q:赤ちゃんの絶壁はヘルメット治療の適応になる?

絶壁(短頭)を含む頭のゆがみは、「正常」〜「最重症」の5段階で評価され、一般的には「中等度」からがヘルメット治療の適応になります。[3][4]

ヘルメット治療は、ヘルメットをかぶることで頭の平らな部分に空間を作り、赤ちゃんの自然な頭の成長による矯正効果を期待する治療法です。基本的には1日23時間、約6ヶ月という長い期間の装着が必要となります。

ヘルメット治療は、生後7ヶ月を過ぎると治療効果が下がるため、重症の場合は早めの治療が効果的です。[4]

しかし、ヘルメット治療を行うかは医師との相談の上ご両親が決定します。中等度であってもヘルメット治療を行わない症例もあるため、頭のゆがみが気になる場合は一度医師へご相談ください。

まとめ

絶壁(短頭)は、ほとんどが仰向け寝など外からの圧力によって起こり軽症であれば6ヶ月頃までに自然に軽減するケースもあります

そのため、「定期的に体の向きを変えてあげる」「授乳の姿勢に気をつける」「生活する場の環境をととのえる」「うつぶせの時間を作る」などの自宅でできる予防対策をぜひ試してみてください。

ただし、ゆがみが強いと感じる場合には病気が隠れている可能性もあるため、医療機関への相談をおすすめします。

なお、赤ちゃんの頭のかたち測定ツールを使用すればスマートフォンから簡単な頭のゆがみ測定が可能です。正確な評価にはなりませんが、ご家庭で簡単にできるため参考にしてください。

関西赤ちゃんの頭のかたち外来」は、絶壁を始めとするさまざまな頭のかたちの専門外来です。お悩みのご相談、3Dスキャンによる頭のかたち撮影、ヘルメット治療などを行っています。

治療は選択せずに、相談だけでも構いません。少しでもご両親の不安が解消できるよう、お気軽にご相談ください。

参考文献

[1]生後1か月の乳児の頭蓋の形状は、生後6か月の変形斜頭症の重症度を予測できるhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8999343
[2]胎児が原因の難産|MSDマニュアル プロフェッショナル版
胎児が原因の難産 – 18. 婦人科および産科 – MSDマニュアル プロフェッショナル版
[3]新生児・乳児の頭蓋変形
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja
[4]日本における三次元スキャナーを使用した頭位性重度斜頭症の乳児の自然経過評価: 頭蓋ヘルメット療法を受けた乳児との比較
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34441827
[5]タミー・タイム・ツール
https://sukusukucl.com/blog/wp-content/uploads/2020/07/4ae4576778eab4e84d05b35eab77877e.pdf
[6]生後 3 か月から 12 か月までの頭蓋位置変形の経過と関連する危険因子: 3D 画像による追跡調査|PUBMED
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27624627
[7]乳児期の頭位性(位置的)頭蓋変形は新生児期よりの予防と回復に務めたい 
https://www.shimane.med.or.jp/files/original/2023032810130391531dad1f5.pdf
[8]病状の予防や治療のために幼児用頭整形枕を使用しないでください: FDA の安全性に関するコミュニケーション
https://www.fda.gov/medical-devices/safety-communications/do-not-use-infant-head-shaping-pillows-prevent-or-treat-any-medical-condition-fda-safety
[9]脳が正常に発達している日本の小児の頭蓋指数
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20856034