新生児の向き癖の原因は?頭のゆがみへの影響と対策を解説
赤ちゃんがいつも同じ方向を向いて寝る「向き癖」。赤ちゃんの頭はまだやわらかいため、ずっと同じ姿勢で寝てしまうと頭のゆがみが起きる可能性があります。
「反対側を向かせてもすぐ元に戻ってしまう」「頭のゆがみがひどくなったらどうすればいいの」と不安に思うご両親もいらっしゃるでしょう。
向き癖は、赤ちゃんの昼間の過ごし方を工夫することで対策可能です。向き癖の原因や影響などと合わせて見ていきましょう。
<この記事の内容>
・新生児の向き癖とは
・新生児の向き癖 5つの原因
・向き癖が及ぼす影響
・新生児の向き癖対策 3選
新生児の向き癖とは
「向き癖」とは、低月齢の赤ちゃんが同じ方向ばかりに頭を向けて寝る癖のことです。[1]
また、「片側にばかり頭を強く押し込む」「頭を真ん中の位置に維持できない」ことも向き癖と呼ばれています。[2]
大部分の赤ちゃんには向き癖があり、新生児の時点で好きな向きがあるケースも珍しくありません。[1]
向き癖が強くなると、頭のかたちのゆがみや股関節への影響が心配されます。
新生児の向き癖5つの原因
新生児の向き癖の原因は、おもに以下の5つと考えられています。
原因によって対策が異なりますので、順番に説明します。
赤ちゃんは光や音の方を向く
赤ちゃんは、明るい方や音のする方を向きます。[1]
電気のついている方向や窓側、家族が楽しそうに過ごしている様子が気になり見ているのです。
いつも同じ場所・同じ方向で赤ちゃんが寝ている場合は、寝かせる向きに注意するとよいでしょう。具体的な方法は、あとで紹介します。
決まった方向からお世話をする
決まった方向からのお世話も、向き癖の原因のひとつです。
実は「新生児は右向きの好きな子が多い」といわれています。それには、利き腕とお世話の向きに関わる以下の理由が考えられます。[2]
・右利きのご両親は赤ちゃんを左手で抱くことが多い
→赤ちゃんはご両親の顔を見ようと右を向く
・右利きのお母さんの多くは赤ちゃんの右側に寝ているといわれている
→赤ちゃんはお母さんを見ようと右を向く
赤ちゃんが過ごしている環境によっては、いつも同じ側からお世話をすることになります。向き癖が気になる場合は、逆側からお世話をしてみるのもおすすめです。
出産時に起きた頭のゆがみが強い
赤ちゃんの頭は、狭い産道を通るために変形しやすくなっています。そのため、出産時の圧力や吸引分娩(出産時に赤ちゃんの頭を吸引カップで引っ張る)による圧力で、赤ちゃんの頭はゆがみやすい状態です。
ゆがみが強い場合、赤ちゃんは頭のかたちに合わせて向きやすい方を自然と向くようになり、違和感のある反対向きは嫌がることがあります。
それが習慣となり、向き癖となるのです。
生まれつき身体的特徴がある
生まれつきの体のつくりにより、向き癖が生じるケースもあります。
首の筋肉が硬くて動かしづらい「先天性筋性斜頸」、首や胸の骨の影響で首が傾く「骨性斜頸」などです。[3]
それぞれ対応や治療法が異なるため、気になる方は医師に相談してみましょう。
お腹の中で既に向き癖があった
お母さんのお腹にいるときから好きな向きがあると、生まれてからの向き癖につながることもあります。[1]
新生児の向き癖に悩んでいるご両親の中には「健診のエコーでいつも同じ向きだった」「生まれた直後からいつも右を向いていた」という経験をされている方も多くいます。
向き癖は、かなり早い段階から生じているケースもあるのです。
向き癖が及ぼす影響
向き癖が及ぼす影響について、以下の内容を説明します。
向き癖は、頭のゆがみだけではなく体全体に影響が及ぶ可能性もあります。ひとつずつ見ていきましょう。
頭のゆがみ
向き癖により、頭のかたちがゆがむ可能性があります。[2]
ずっと同じ方向を向いていると、下になっている面の頭が平らになります。症状が進むと頭のかたちが対称ではなくなる「斜頭症」になることもあり、注意が必要です。
斜頭症は、斜視や歯並びなどに影響する可能性もあります。頭のかたちを専門に治療するクリニックもあるため、気になる方は医師に相談してみましょう。
斜頭症について気になる方は、以下の記事も参考にしてください。
斜頭症における顔のゆがみ|原因や治療法・発達障害との関連も解説
背骨のゆがみ
向き癖があることで、背骨のゆがみが生じることもあります。
背骨がゆがむ「側彎(そくわん)」という病気が0〜3歳の幼児期に発症する場合、向き癖が何らかの影響を与えているといわれています。[4]
背骨のゆがみは成長に伴い進行し、姿勢や呼吸などの全身に影響を及ぼします。
赤ちゃんの背骨に気になるところがあれば、医師に相談してください。
股関節の発育不良
向き癖は、股関節の発育不良も引き起こす可能性があります。
同じ向きを向き続けることにより股関節が開きづらくなり、その結果発育不良となるのです。
向き癖で股関節が開きづらくなる流れは、以下の通りです。[5]
1.同じ方向を向いていることにより、下半身にねじれが生じる
2.顔が向いていない方の足が立てひざの状態になる
3.その状態が続くと、股関節を自由に動かしづらくなる
股関節の発育不良は、向き癖だけではなく遺伝や分娩方法など他の要素も関係します。
股関節は乳児健康診査(3~4ヶ月健診)で確認されるため、気になる方は健診時に相談するとよいでしょう。
新生児の向き癖対策3選
新生児の向き癖対策について、以下の内容を説明します。
すぐに取り組める対策もあるので、ぜひ参考にしてください。
寝る向きを変える
赤ちゃんの寝ている向きを、いつもと変えるとよいでしょう。
赤ちゃんは、明るい方や音のする方を向くのを好みます。
頭と足の位置が逆になるよう寝る向きを変え、いつもと反対側を向くよう促してください。
それでもいつもと同じ向きを向くようなら、頭から背中にかけて丸めたタオルを置くと姿勢が保持されます。[1]
タオルを背中に入れている間は、事故防止のため大人が見守るようにしてください。
おもちゃや声かけで興味を引く
おもちゃや声かけで興味を引いて、反対側を向くよう促す方法もあります。[2]
日中遊ぶ時間に、向いてほしい方向から音のなるおもちゃを鳴らしたり、絵本を読んだりするとよいでしょう。
メリーのように赤ちゃんが気に入って見つめるおもちゃがあれば、向いてほしい側に設置するのも有効です。
うつぶせの時間(タミータイム)を増やす
タミータイムや抱っこの時間を増やして、頭が床につく時間を減らすことも向き癖対策になります。[1]
タミータイムとは、大人が見守る中で、うつぶせ遊びをすることです。
首や体幹などの筋肉の発達や、頭の変形予防に効果があるため、頭のゆがみによる向き癖を予防することができます。
タミータイムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ
新生児の向き癖は「光や音の方を向く赤ちゃんの習性」「決まった方向からのお世話」「出産時の頭のゆがみ」「生まれつきの身体的特徴」「お腹の中での向き癖」などによって起こります。
向き癖は珍しいものではありませんが、放置すると頭のゆがみや股関節の発育不良を引き起こす可能性があります。
しかし、「寝る向きを変える」「向き癖と逆方向から興味を引く」「タミータイムを増やす」などで改善を目指すことが可能です。
赤ちゃんの好みや生活環境を考慮しながら、自分たちの家族に合った対策を見つけてみましょう。
参考文献
[1]とくしまはぐくみネット「同じ方向ばかり向いて寝ているためなのか,赤ちゃんの頭が変形しています。」
https://www.tokushima-hagukumi.net/faq/docs/faqbaby1.html
[2]「Defining the nature and implications of head turn preference in the preterm infant」Early Hum Dev. 2016 May ; 96: 53–60
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4867076/pdf/nihms765465.pdf
[3]公益社団法人 日本整形外科学会「斜頚」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/torticollis.html
[4]病院評価機構認定医療機関 滋賀県立小児保健医療センター「特発性側彎症の原因」
https://www.pref.shiga.lg.jp/mccs/shinryo/sekegeka/shikkan/301358.html
[5]厚生労働省「乳児健康診査における股関節脱臼一次健診の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/kenshintebiki.pdf