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斜頭症は治療しないでよいのか|治療しないとどうなるかや治療方法も解説

「斜頭症」とは頭のかたちに左右差があり、上から見るとななめにゆがんでいることです。寝ている時間が長いため、赤ちゃんは頭の後ろ(後頭部)が左右非対称や平らになりがちです。
乳児検診や里帰り時に赤ちゃんの頭のかたちを相談したものの、「自然に治る」「気にするほどではない」と言われると、どうしたらよいか不安を感じてしまいますよね。
この記事では、斜頭症は治療しないでよいのか治療しないとどうなるのかなどを解説します。治療方法と合わせて見ていきましょう。

なお斜頭症については、原因や治療法について詳しく説明している以下の記事を参考にしてください。

斜頭症は治療しないでよいのか

斜頭症の治療が必要かどうかは、ゆがみの程度や赤ちゃんの月齢で考えるとよいでしょう。具体的には、以下の通りです。

日本では昔から赤ちゃんを仰向けにして寝かせる習慣があることから、斜頭症の人が多いといわれています。[1]

斜頭症が多く、頭のかたちを気にする人も少なかったため、「赤ちゃんの頭のかたちは自然に治る」「治療は必要ない」という根強い声が残っているのでしょう。

頭のゆがみが大きいなら治療は必要

結論からいうと重度の斜頭症は治りにくいため、頭のかたちをきれいにするなら治療が必要です。

頭のゆがみが大きいと以下の悪循環が生まれ、ゆがみの程度も進行しがちです。

1.平らな面を下にした方が、頭が安定して寝やすく感じる
2.寝ている間に自分の頭の重さで圧力がかかる
3.頭のゆがみがより進行する
4.1に戻りループする

斜頭症が重い赤ちゃんは、寝返りやハイハイができるようになってからも同じ向きで寝ることが多く、頭のゆがみが固定化しやすいといわれています。[2]

また、斜頭症による頭のゆがみを放置すると、あとで説明する健康上の不都合が出るかもしれません。

赤ちゃんの頭は、生まれてからの1年で大きく成長します。頭が大きくなる時期に合わせて、斜頭症の治療は生後3〜6ヶ月でおこなうのが一般的です。

成長につれて気にならなくなるケースもあり

斜頭症の症状が軽い場合は、赤ちゃんの起きている時間が増えるにしたがって、ゆるやかにゆがみが改善していくケースもあります

また、斜頭症が完全に治っていなくても、赤ちゃんの髪が伸びるにつれて頭のかたちが気にならなくなることもあるでしょう。

なお、頭のかたちを診察する医療機関では、3Dスキャンで赤ちゃんの頭のかたちを計測してご両親に説明します。

「気のせいかもしれない」「他の赤ちゃんと比べて頭のかたちはどうなのだろう」といった疑問は、医師のもとできちんと調べることで解消できるでしょう。

斜頭症を治療しないとどうなるのか

治療が必要な斜頭症を放置すると、以下の症状が起こる可能性があります。

これから説明する症状は必ず出るわけではありませんが、リスクとして知っておきましょう。

目に影響が出る

斜頭症は、以下のような目周りの影響を起こす可能性もあります。[3]

斜視(しゃし:左右の視線が合わないこと)
乱視(らんし:角膜がゆがみ、目のピントがあわずにぼやけること)

斜視と乱視のどちらが増えやすいかは、斜頭症の種類や状態によって異なります。

人間の視力は生まれてから発達するため、斜視や乱視を放置するとメガネをかけても視力が出ない「弱視」につながるリスクもあります。[4] 

ただし斜視は約2%の子どもにみられるため、すべての斜視が斜頭症に関係するわけではありません。[5]

斜視や乱視に早く気付くには普段の生活で「目つきが気にならないか」「ひどく眩しがらないか」などに注意し、気になる症状がある場合は医療機関に相談しましょう。[6]

肩こりや頭痛の原因になる

斜頭症により頭がいつも一定の方向を向いていると、首や背中の骨にゆがみが出る可能性もあります

首や背中のゆがみは、将来の慢性的な「肩こり」「頭痛」などの原因になるかもしれません。実際に大人の頭痛患者さんのMRIを撮影すると、頭や首のゆがみがある方もみられます。

斜頭症は見た目だけの問題でなく、将来の健康リスクにつながる可能性もあるのです。

発達に影響する可能性もある

近年、斜頭症と発達の遅れの関連性が注目されています。

たとえば、海外の研究では「必ず生じるものではないが、斜頭症は赤ちゃんの発達が遅れるリスク要因である」という報告もあります。[2][7]

ただし、発達の遅れと斜頭症に関する医学的な関連性は明らかではなく、はっきりとしたことはまだ解明されていません

赤ちゃんの発達には、大きな個人差があります。

斜頭症のある赤ちゃんの発達が気になる場合は、頭のかたちを診察する医療機関やかかりつけの小児科で相談してみましょう

耳やあごが左右非対称になる

斜頭症を治療しないと「耳の位置が前に移動する」「おでこやあごが左右非対称になる」などが起こり、顔のパーツのバランスが悪くなる可能性があります

その結果、以下のような不都合が起こるかもしれません。

・歯のかみ合わせが悪い
・コンプレックスが生まれる
・マスクやメガネをかけにくい

耳やあごの非対称は見た目の問題にとどまらず、かみ合わせの悪さやマスク・メガネのかけにくさなど健康・生活面の不便にもつながります

ゆがみが頭だけでなく顔にまで及ぶ場合は、一度相談するのもよいでしょう。

斜頭症の治療方法

向き癖による斜頭症は、以下2つの治療方法があります。

斜頭症の治療は、健康保険や乳児医療証の対象外となる「自由診療」です。治療をするかしないかは、ご両親の判断に任されます。

ゆがみの程度や赤ちゃんの月齢、ご両親の考えによって適した治療法は異なります。順番に見ていきましょう。

理学療法

理学療法とは運動機能の維持・改善のためにおこなう運動やマッサージで、一種のリハビリです。[8]

具体的には、赤ちゃんの状態に合わせて以下のような治療・対処をおこないます。

・赤ちゃんの寝る向きを変える
・うつぶせの時間(タミータイム)を増やす
・向き癖と逆方向に興味を引くおもちゃを置く
・ベビーカーやチャイルドシートで長時間同じ姿勢にさせない

アメリカの調査では、理学療法を受けた赤ちゃんの77.1%が頭のゆがみの矯正に成功したという報告もあります。[9]

ヘルメット以外の斜頭症治療について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

ヘルメット治療

斜頭症によるゆがみが大きい場合は、理学療法よりも効果の高いヘルメット治療を選ぶケースがよく見られます。

ヘルメット治療とは、赤ちゃんの頭のかたちに合わせてオーダーメイドしたヘルメットをかぶせ、頭のかたちを整える治療法です。歯の矯正のように外側から力をかけるのではなく、赤ちゃんの頭が大きくなる力を利用して自然なかたちに整えていきます。

治療にかかる期間はおよそ2〜6ヶ月で、治療中は1日23時間毎日ヘルメットをかぶるのが一般的です。

ヘルメット治療の効果は高く、治療を受けた94.4%の赤ちゃんの頭のかたちが回復したという報告もあります。[9]

Q:ヘルメット治療をすると後悔しますか?

統計上のデータはありませんが「ヘルメット治療をしなければよかった」と後悔するより、「治療をしなかったため、頭のかたちが治らなかった」と後悔するご両親が多いのではないでしょうか。

ヘルメット治療の有効性が高いのは生後2〜6ヶ月という限られた期間で、時期を過ぎると頭のかたちは改善しにくくなります。

あとから「治療をしておけばよかった」と後悔しないよう、頭のかたちが気になる場合は一度相談してみるのがよいでしょう。

Q:ヘルメット治療に後遺症はありますか?

ヘルメット治療では、ムレや擦れによる「かぶれ」「水ぶくれ」など皮膚系のトラブルが起こりやすいとされています。[10]

ただし皮膚トラブルが出た場合も、軟膏を塗ったりヘルメットのクッションを調節したりすれば、ほとんどの赤ちゃんが治療を継続できます。

また、正しく調節されたヘルメットが頭の成長を妨げることはないため、脳の発達や成長に関する後遺症が出ることはありません。[11]

ヘルメット治療の後遺症について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

赤ちゃんの月齢が低くて症状が軽い場合は、成長するにつれて斜頭症が気にならなくなる場合もあります。しかし、重度の斜頭症は自然に治りにくく、改善を希望するなら治療が必要です。

斜頭症を放置すると「目への影響」「肩こり・頭痛」「耳やあごの非対称」などが出るおそれがあるため、気になる場合は頭のゆがみを診察する医療機関に相談しましょう。

東大阪市にある「赤ちゃんの頭のかたち外来」は、赤ちゃんの頭のゆがみを診察できる専門外来です。近鉄奈良線・近鉄大阪線の「布施駅」近くと赤ちゃんを連れての受診もしやすい環境を整えております。

無理に治療をすすめることは決してなく、相談や3Dスキャンによる頭の測定のみも可能です。

予約や質問は、公式LINEから受け付けております。ぜひ気軽に登録して、赤ちゃんに関するご両親の悩み解消にお役立てください。

参考文献

[1]新生児・乳児の頭蓋変形|日大医誌 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja
[2]医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会の進め方|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000055706_4.pdf
[3]非症候性斜頭症患者における眼科所見|PUBMED
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12867869/
[4]弱視|日本弱視斜視学会
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia
[5]日本眼科医会|子供の弱視・斜視
https://www.gankaikai.or.jp/health/betsu-003/
[6]赤ちゃんの目の病気|日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/13/index.html
[7]単縫合頭蓋癒合症および癒合症を伴わない斜頭症の小児における神経発達|PUBMED
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11711916/
[8]理学療法とは|日本理学療法士協会
https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/
[9]頭蓋位置変形に対する保存療法とヘルメット療法の有効性|PUBMED
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25415272/
[10]添付文書|ベビーバンド
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/701708_30400BZX00090000_1_01_01
[11]変形性斜頭症の治療中に頭蓋骨の成長が制限されない|PUBMED
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10420129