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新生児 横向き寝が好きな理由|長所と危険性や仰向けへの戻し方を解説

赤ちゃんがやっと寝てくれて、ホッとしたのも束の間。横向きで寝ていることに気付いて「どうしたらいいのだろう」と困った経験がある方は多いのではないでしょうか。

横向き寝を仰向けに戻すと、赤ちゃんが起きて泣いてしまうケースは珍しくありません。

新生児は横向き寝が好きな子が多いといわれていますが、危険性もあるため注意が必要です。そこで今回は、新生児が横向き寝を好む理由長所危険性などを解説します。横向き寝から仰向けに戻す方法も合わせて見ていきましょう。

※この記事における「横向き寝」とは、横向きで眠ることではなく赤ちゃんの体が横向きになる姿勢を指しています。

新生児が横向き寝を好む理由

新生児は、横向き寝の好きな子が多いといわれています。

その理由は、「お母さんのお腹の中にいるときに、背中を丸めた姿勢をとっていたから」と考えられています。

そのため、お腹の外に出てきた途端に仰向けで体を伸ばして寝るよう促され、戸惑っているのかもしれません。

また、出産時の圧力や吸引分娩(出産時に赤ちゃんの頭を吸引カップで引っ張る)で生じた頭のゆがみにより、「横向き寝の方が楽だ」と感じる子もいます。

寝返りのできない新生児は、自分で仰向けから横向きになることはあまりありません。

しかし、以下のような例では横向きになったあとにそのまま眠ってしまうケースが考えられます。

・仰向けで体を丸めているうちに、自然と横に転がってしまう
・添い乳で横向きになり、そのまま眠ってしまう

横向き寝は体を支える面積が狭いため、筋力やバランス感覚の未熟な赤ちゃんは不安定な体勢になりがちです。[1]

そのため、気付かないうちに横向きがうつぶせに変わってしまう可能性があります。うつぶせ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息のリスクがあるため、厚生労働省は1歳になるまではうつぶせではなく仰向けで寝かせるよう推奨しています。[2]

横向き寝にもメリットはありますが、危険も伴うため大人が見守る中で行うようにしましょう。

新生児の横向き寝3つの長所

眠るときは仰向け寝が基本ですが、新生児の横向き寝にはメリットもあります。ここからは起きている新生児を横向き寝にする長所を3つ紹介します。

いつもと異なる姿勢にはメリットもあるので、ぜひ参考にしてください。

刺激が増える

横向き寝は体の使い方が仰向け寝と異なるため、バランス感覚の発達に役立ちます。[3]

床に接する体の感覚や体重のかかり方などの変化も、赤ちゃんにとっては大切な刺激です。

さらに、仰向けと横向きでは見える景色も異なります。様々な姿勢をとることは、視覚や触覚など、赤ちゃんの五感を刺激することにつながります。その刺激が、心と脳の発達につながっていくのです。

寝返りの練習になる

起きている間の横向き寝は、体の発達にも役立ちます。

寝返りとは、赤ちゃんが自分の力で横向きになって、そのままゆっくりうつぶせになることです。

つまり、横向きは寝返りの途中の姿勢。横向きの体の感覚や手や足の位置、見える景色などの情報を赤ちゃんは受け取り、その情報を元に寝返りを獲得していくのです。[4]

体の向きを変えるときは、赤ちゃんの体を優しく支えながら寝返りの要領で横向きや仰向けにしてあげると、さらに寝返りの練習になるでしょう。

絶壁頭の予防になる

赤ちゃんの頭はやわらかいため、ずっと仰向けで寝ていると後頭部が平らになる「絶壁頭(ぜっぺきあたま)」になることがあります。

絶壁頭を予防するには、赤ちゃんが起きている間に同じ姿勢を取り続けないことが大切です。

そのため、赤ちゃんが起きている時間は「タミータイム(腹ばい運動)」を取り入れるとともに、「横向き寝」「抱っこ」など様々な姿勢をとらせるとよいでしょう。

タミータイムについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

新生児の横向き寝3つのリスク

新生児の横向き寝には、以下のようなリスクがあります。

大切なことなので、ぜひ理解しておきましょう。

腕や脚のうっ血が起きる

横向きに寝ていると、下になった方の腕や脚の血流が悪くなり、「うっ血」が起きることがあります。

うっ血は、指に輪ゴムをきつく巻くと血流が悪くなり、皮膚の色が変わるのと同じ症状です。

うっ血が起こると、しびれ感や皮膚の変色があらわれ、さらに症状が進むと一時的にその部分の感覚がなくなります

特に寝返りがまだ難しい新生児は、一度横向き寝になると自分で体勢を変えられないため、うっ血のリスクが高まります。

股関節の発育不良が起きる

赤ちゃんの股関節の発育には、脚の動きを妨げないことが大切です。

赤ちゃんにとって自由に脚を動かせる状態とは、「仰向け寝でM字に脚を曲げている体勢」。

横向き寝を長時間続けると、片方の脚が立てひざの状態となります。すると、脚の位置の非対称と動きの制限がかかり、股関節の脱臼や発育不良が起こる可能性があるのです。

乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症

乳幼児突然死症候群(以下SIDS)とは、何の予兆や症状もないまま睡眠中に赤ちゃんが亡くなってしまう、原因の分からない病気です。

厚生労働省は、SIDSの発症リスクを低くするために「1歳になるまでは、寝かせるときは仰向けに寝かせる」ことを推奨しています。[2]

また、寝ている間に横向きからうつぶせになると、窒息のリスクも高まります。

危険を避けるため、赤ちゃんが眠るときは必ず仰向けに戻しましょう。

横向き寝をするときの注意点

新生児に横向き寝をさせるときの注意点は以下の通りです。

新生児を守る大切な注意点です。必ずご覧ください。

必ず見守りをする

横向き寝は、仰向け寝と比べると不安定な姿勢です。

そのため、ふとした瞬間にうつぶせや仰向けに転がり、ケガや窒息などの予期せぬことが起きる可能性があります。

横向き寝をさせるときは、必ず大人が目を離さないようにしてください。

眠るときは仰向けにする

新生児が眠るときは仰向けに戻しましょう。

横向き寝のまま眠ると、うつぶせに姿勢が変わった際にSIDSの危険性が高まります。

医師から寝る姿勢を指導されている場合以外は、仰向けで寝かせてください。

腕や脚がうっ血しないよう姿勢を調整する

腕や脚が体の下に入っていたら、下になっている方を前に出してあげましょう

そうすることで姿勢が安定し、うつぶせになりにくくなります。

また、腕や脚のうっ血も予防できます。

見守りや一緒に遊ぶ中で、苦しい姿勢になっていないか適宜チェックしてください。

Q:横向き寝を直すと起きるときはどうしたらいい?

寝ている赤ちゃんを横向き寝から仰向け寝に直すとき、びっくりして起きる子は珍しくありません。

生後4ヶ月くらいまでの赤ちゃんは、モロー反射(外部の刺激に驚き両腕を広げ、しがみつくような動作をする反応)があります。わずかな刺激でモロー反射が起き、自分の動作で目が覚めてしまうのです。

モロー反射を予防しながら赤ちゃんの向きを変えるポイントを以下に紹介します。

1.まずは優しく触れる
2.頭と背中、両腕を支えながらゆっくりと仰向けにする
3.ゆっくりと赤ちゃんに触れている手を離す

ポイントは「優しくゆっくり」です。まずは触れたらちょっと待つ。向きを変えたらちょっと待つ、そして手を離す、というようにゆっくりと向きを変えましょう。[5]

まとめ

お母さんのお腹の中にいるときの姿勢に近いため、新生児は横向き寝を好む傾向があります。

起きているときの横向き寝には、「刺激が増える」「寝返りの練習になる」「絶壁頭の予防になる」という長所があります。

一方で横向き寝のまま眠ってしまうと「腕や脚のうっ血」「股関節の発育不良」「乳幼児突然死症候群(SIDS)」などのリスクがあるのも事実です。

新生児を横向き寝にするときは、必ず見守りましょう。赤ちゃんが寝るときは仰向けに戻すことで、SIDSのリスクを減らすことが可能です。

新生児期は仰向け寝が基本ですが、赤ちゃんとご両親が起きているときは、色々な姿勢にチャレンジするとよいでしょう。

参考文献

[1]MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳児突然死症候群(SIDS)」
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19-%E5%B0%8F%E5%85%90%E7%A7%91/%E4%B9%B3%E5%B9%BC%E5%85%90%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E7%96%BE%E6%82%A3/%E4%B9%B3%E5%85%90%E7%AA%81%E7%84%B6%E6%AD%BB%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4-sids

[2]厚生労働省「11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181942_00001.html

[3]pathways「Tummy Time」
https://pathways.org/topics-of-development/tummy-time

[4]pathways「Parents’ Guide to the Side Lying Position」
https://pathways.org/watch/parents-guide-to-the-side-lying-position

[5]おかやま子育て応援サイトこそだてぽけっと「抱っことおんぶ」
https://www.city.okayama.jp/kosodate/0000046841.html