吸引分娩で赤ちゃんの頭の形が変わる?|原因と改善方法を徹底解説
生まれたばかりの赤ちゃんの頭の形を見て、「なんだかいびつな形をしているけど大丈夫かな」と心配になる保護者の方は多いです。赤ちゃんの頭の形の変化には、出産時の要因から生後の生活習慣まで、様々な原因が関わっています。多くの場合は成長とともに自然に改善しますが、適切なケアや医療的な介入が必要なケースもあります。この記事では、外科医の視点から赤ちゃんの頭の形がいびつになる原因を詳しく解説し、具体的な改善方法や予防策をお伝えします。
出産時に起こる頭の形の変化
赤ちゃんの頭の形に影響を与える最初の要因は、出産時の状況です。
自然分娩での産道通過による影響
自然分娩では、赤ちゃんが狭い産道を通過する際に、頭に大きな圧力がかかります。この産道通過圧力により、頭蓋骨が一時的に変形することがあります。特に分娩に長時間かかった場合や、赤ちゃんの頭が大きい場合には、より顕著な変形が見られることがあります。
赤ちゃんの頭蓋骨は大人と違って柔らかく、骨同士の継ぎ目も完全にくっついていません。これは成長に伴って脳が大きくなることに対応するためですが、同時に外からの圧力で形が変わりやすいということでもあります。
吸引分娩や鉗子分娩による変形
分娩時に医学的な補助が必要になった場合、吸引分娩や鉗子分娩(かんしぶんべん)といった方法が使われることがあります。吸引分娩では、赤ちゃんの頭に吸引カップを装着して引き出すため、装着部分が一時的に腫れたり、頭の形に影響を与えることがあります。
吸引分娩後には「頭血腫」という頭皮の下に血液が溜まる状態になることもありますが、これは通常数週間から数ヶ月で自然に吸収されます。鉗子分娩でも同様に、器具による圧迫で一時的な変形が生じる場合があります。
出生時外傷による頭の変形
分娩時の圧力や器具の使用により、出生時外傷として頭の形の変化が起こることがあります。これらの多くは成長とともに改善していきますが、場合によっては専門的な観察や治療が必要になることもあります。
生後の生活習慣による頭の形の変化
出産後の生活の中でも、赤ちゃんの頭の形に影響を与える要因があります。
向き癖による後頭部の圧迫
新生児期から乳児期にかけて、赤ちゃんは1日の大部分を寝て過ごします。この時、いつも同じ方向を向いて寝る向き癖があると、向いている側の後頭部が常に圧迫されることになります。
現在は乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防のため、仰向け寝が推奨されていますが、長時間同じ姿勢で寝ることにより、後頭部の圧迫が続くと頭の形に影響が出ることがあります。特に生後2~4ヶ月頃は頭蓋骨が柔らかいため、この影響を受けやすいです。
筋性斜頸による首の筋肉の問題
筋性斜頸(きんせいしゃけい)とは、首の筋肉の発達不足や緊張により、首が一方向に傾いてしまう状態です。首の筋肉に左右差があると、赤ちゃんは楽な方向にばかり頭を向けるようになり、結果として頭の形にも影響が出てきます。
筋性斜頸は早期に発見して適切なリハビリテーションを行うことで、多くの場合改善が期待できます。首の可動域を広げる運動や、マッサージなどが効果的です。
斜頭症などの頭蓋骨変形について
赤ちゃんの頭の形の問題の中でも、特に注意が必要な状態があります。
斜頭症の症状と特徴
斜頭症は、頭を上から見た時に平行四辺形のようにゆがんで見える状態です。片側の後頭部が平たくなり、反対側の前頭部が突出して見えることが特徴です。新生児の頭のゆがみの中でも、比較的よく見られる状態です。
軽度の斜頭症であれば、適切なケアにより自然回復が期待できますが、変形が著しい場合には専門的な治療が必要になることもあります。生後3~6ヶ月頃までに改善の兆しが見られない場合は、医療機関での相談をおすすめします。
その他の頭蓋骨変形パターン
斜頭症以外にも、後頭部全体が平たくなる短頭症や、頭が前後に長くなる長頭症など、様々な頭蓋骨変形があります。これらの変形パターンによって、適切な対応方法も変わってきます。
遺伝的な要因
頭の形には、生活習慣だけでなく生まれ持った要因も関わっています。
遺伝的要因による頭の形の特徴
遺伝的要因により、家族内で似たような頭の形の特徴が見られることがあります。両親の頭の形の特徴が子どもに受け継がれることは珍しくありません。ただし、遺伝的な要因による頭の形は、病的なものではなく、その家族の特徴として考えられます。
遺伝的な頭の形の特徴と、生活習慣による変形を区別することが、適切な対応を考える上で重要です。
具体的な改善方法と予防策
赤ちゃんの頭の形を改善し、変形を予防するための具体的な方法をご紹介します。
日常生活でできる改善方法
まず重要なのは、赤ちゃんの寝る向きを定期的に変えることです。向き癖がある場合は、反対側を向かせるように工夫しましょう。おもちゃや音の出るものを使って、自然に首を動かす方向を誘導することが効果的です。
起きている時間には、うつ伏せの時間(タミータイム)を作ることも大切です。これにより後頭部への圧迫を減らし、首や背中の筋肉の発達を促すことができます。ただし、必ず保護者が見守っている時に行い、寝る時は必ず仰向けにしてください。
抱っこの方法による予防
抱っこの際も、いつも同じ腕で抱かずに、左右交互に抱っこすることで、頭にかかる圧力を分散させることができます。縦抱きの時間を増やすことも、後頭部への圧迫を減らす効果があります。
専門的な治療法
医療機関では、変形の程度に応じて様々な治療法が用意されています。軽度から中等度の変形に対しては、理学療法や作業療法による運動療法が行われます。
重度の変形に対しては、ヘルメット治療という方法があります。これは、赤ちゃんの頭にオーダーメイドのヘルメットを装着し、成長する部分には余裕を持たせ、出っ張っている部分の成長を制限することで、頭の形を整える治療法です。
病院での相談が必要な場合
どのような時に専門医への相談が必要かを理解することは、適切な対応のために重要です。
医療機関受診の目安
以下のような場合には、小児科や形成外科での相談をおすすめします。生後3ヶ月を過ぎても明らかな向き癖が続いている場合、頭の変形が目立って進行している場合、首の可動域に明らかな制限がある場合などです。
病院での相談を迷っている場合は、まずは小児科の定期健診の際に相談してみることから始めましょう。専門医が必要と判断した場合は、適切な科への紹介を受けることができます。
治療のタイミングについて
頭の形の治療には適切なタイミングがあります。生後6ヶ月頃までは頭蓋骨が柔らかいため、この時期の治療が最も効果的です。遅くとも1歳頃までには専門的な評価を受けることが大切です。
まとめ
赤ちゃんの頭の形がいびつになる原因には、出産時の圧力や生後の生活習慣、遺伝的要因など様々な要素が関わっています。多くの場合は成長とともに自然に改善しますが、適切なケアや早期の対応により、より良い結果が期待できます。
日常生活では向き癖の改善や抱っこの仕方の工夫など、簡単にできる対策から始めることが大切です。心配な症状がある場合は、迷わず医療機関で相談し、必要に応じて専門的な治療を受けることをおすすめします。赤ちゃんの健やかな成長のために、適切な知識を持って対応していきましょう。





